女性リーダーシップの模範、ダイシ・オラルテ・デ・カナボスは、ブティック型不動産開発会社であるフラッグ・ラグジュアリー・グループの共同創設者・社長・COOです。この企業は、ラグジュアリーホテル、体験型リテールセンター、また洗練されたデザイン空間を専門に扱い、コミュニティへの参加を公約として掲げています。ザ・リッツ・カールトン・ニューヨーク・ノマドなどを手掛けた華々しい経歴の持ち主であるダイシは、壮大なビジョンを実現する手腕を証明してきました。会議に出席する唯一の女性であることが多い業界において先駆者であったダイシは、女性が活躍できる場所作りにも同様に情熱を傾けています。娘のソフィア・カナボスと起ち上げたウーマンズ・パワー・シリーズを通して、業界を超えて女性がつながり、協力し、刺激し合えるよう、力をもたらし続けています。
不動産業界で働く女性たちが直面している障壁、家族の機能、女性がサポートしている女性の力について、ダイシ・オラルテ・デ・カナボスに話を聞きました。
仕事や人生において、何に情熱を感じますか?
仕事では、開発、建設、デザイン、そして極上の顧客体験を作り上げることに情熱を感じます。忘れられないラグジュアリーな体験をデザインすることに、この上ない喜びを感じるのです。また、シェフのホセ・アンドレスをはじめとする、これらの分野において先見の明のある有能な専門家とチームを組んで働けることを幸運に思います。私は長い間、芸術にも強い関心を持ってきました。幸い、展示物や物件に飾る芸術作品を取りまとめるなどして、この情熱を仕事にも生かすことができます。例えば、ザ・リッツ・カールトン・ニューヨーク・ノマドでは、女性が経営するカルチャー・コープスと協力し、地元の芸術家が手掛けた多彩な作品を厳選しました。このアイコニックなホテルの共用部やゲストルームに、ニューヨークならではの美意識が光る作品を展示するためです。他者を助け、力をもたらすことにも、懸命に取り組んでいます。娘のソフィア・カナボスと起ち上げたウーマンズ・パワー・シリーズの共同創設者として、またザ・フレンド・オブ・ニューヨーカー・フォー・チルドレンの創設者として、活動を続けています。後者は、里親家庭で生活する子どもたちを支援する組織です。
お嬢様とウーマンズ・パワー・シリーズを起ち上げたきっかけは何ですか?
よく出席する不動産業界やホスピタリティ業界のカンファレンスにおいて女性の数が圧倒的に少ないことに気づき、娘のソフィアと共にウーマンズ・パワー・シリーズを起ち上げました。会場にいる女性の数はもちろん、スピーカーとして登壇する女性の数が少ないことに何度も失望したからです。こうしたイベントに参加するには、多くのコストや時間が必要になります。しかし、家族の世話の中心を担う女性が家族以外のことにコストや時間を捻出するのは、非常に難しいのです。私たちはこうした障壁を考慮し、ウーマンズ・パワー・シリーズを通して、女性たちにより良い選択肢を提供することを決意しました。シリーズの各イベントにはさまざまな職業や地位で働く女性が参加し、ネットワーキングをしたり、コミュニティを作ったり、業界の知見を共有したりします。イベント終了後、帰路につく参加者全員に「元気が出た」と思ってもらうことが私たちの目標です。キャリアや個人的な目標達成を後押しする実行可能なスキルや学びも、持ち帰っていただきたいと思っています。
リーダーという役割を持つ女性だけが直面する障壁を経験したことはありますか?
不動産業界において最も信頼のおける人になろうと、懸命に働きました。その成果を誇りに思っています。子どもを産んだ後は、業務範囲が狭まりました。以前ほど長時間働けなかったからです。これは私自身が決めたことでした。子どもを育てている間、昼夜を問わず年中働くことはしたくなかったのです。その代わり、開発ではなく顧客体験に専念することになりました。子どもたちが本格的に学校に通うようになってから徐々に、より長い時間を割かなければならないプロジェクトに関わるようになりました。そして最終的に、1億ドルをかけて行われたザ・リッツ・カールトン・ニューヨーク・ノマドの刷新を指揮したんです。これは、私自身初の新築物件でした。それでも程なくして、社会は私のことを「夫が抱える不動産プロジェクトを担当するインテリアデザイナー」として見るようになりました。成功を収めているこのビジネスにおいて、私が経営側の人間であることが分かると、人々はとても驚きました。
キャリアを踏み出そうとしている若い女性に対して、どのようなアドバイスをしますか? あなたと同じ道を歩む娘さんに授けた教えはありますか?
私は、娘のソフィアが自信に満ち、有能で信頼のおける若い女性になれるよう育てました。彼女は今、自分自身の能力でビジネスリーダーとして活躍しています。娘にも教えましたが、皆に提供できる自分だけのユニークな視点を大切にすべきです。実績を積み、自分のやり方に自信が持てるようになるなら、そうした個性的なビジョンを実現するためのリソースや責任を任されるようになるからです。
ひとつのアドバイスとして、励みになるような「座右の銘」があれば教えてください。
リーダーシップに対する姿勢は、幼い頃から親しんできたスポーツに学びました。私は複数のチームを管理していますが、これらのチームが円滑に協働するよう、連携とコミュニケーションという基盤を強化するよう努めています。コーチのように明確な指示を出し、権限委譲をすることが、成功につながるんです。ビジネスを率いるのは決して簡単ではなく、社員全員が協力する必要があることです。それで、格言を求めている人には、「どの選手にも、その人だけにできる大切な役割がある」ということを覚えておくように言いたいですね。ある人はアシストに徹し、別のある人は得点を決めるでしょう。でも、スコアボードには全員で得点を記入し、チームとして勝利を祝うのです。
最も尊敬する女性は誰ですか?またその理由は?
私が最初に感銘を受けたのは、母のピナです。男性と同じくらい自信を持って果敢にチャレンジするよう、私たち姉妹を勇気づけてくれました。事実、母は繁盛しているレストランビジネスを切り盛りしていました。1950年代、ラテンアメリカで初めて大学教育を受けた女性の一人でもあります。
今日に至っても女性のエンパワーメントについて討議し続けるべきなのはどうしてだと思いますか?
ビジネス界における男女格差は近年改善されましたが、いまだに根強く残っているのも確かです。ビジネスやキャリア、あるいはブランドを始めるには困難を極めますが、女性でいるだけで、男性にはない特有の障壁にぶつかることがあります。役員や経営幹部として働く女性の割合は、男性のそれよりもはるかに低いのです。男女格差の解消には、まだ50年はかかるでしょう。これは私の世代だけの話ではありません。大きな前進はあったものの、ビジネス界で働く若い女性の一人であるソフィアの体験が、まだ改善の余地があることを示しています。だからこそ、ウーマンズ・パワー・シリーズでの継続した試みを、私たちは誇りに思っているのです。
目的は、あなたにとって何を意味しますか?
母親として、そして人生とビジネスにおけるパートナーとして、目的にしているのは愛です。家族を絆で繋ぎ、自分が死んだ後も残る遺産を作ろうと自分を奮い立たせてくれるもの、それが愛です。また、どんな細部にも卓越性を追求し、関わるプロジェクトすべてが美・快適性・革新性を語るよう努めなければなりません。
