To creativity its freedom

小さな扇を思わせる、ちりばめられた花びら。そして、ブルー、イエロー、ポピーレッドの色合いで自由に浮遊するフルーツプリント。それはまるで映像と音楽で作り上げる、動きのあるイリュージョンを想起させます。

上野リチ・リックスは、20世紀初頭にテキスタイルと工芸のデザイナーとして活躍し、そのポエティックなデザインによって、ウィーン工房の最も傑出したアーティストの一人として名を馳せました。当時、ウィーン・モダニズムは、簡素化と合理性の追求とされていました。リチはそこに、装飾、活気、色彩、そして曲線を持ち込んだのです。彼女は、自身が好んでそう呼んだように、「ファンタジー」の概念に重きを置きました。彼女にとって、それはオリジナリティを実現するための想像力を示すものでした。

2023年3月に、クリエイティブ ディレクターのアルベルト・クリームラーはリチの作品に初めて出会い、その独自の視覚言語に対する情熱に魅了されました。鮮やかな色彩の対比が彼女の作品を輝かせますが、特に「Easter Bonbonnière(イースター用ボンボン容れ)」のデザインでは、その素晴らしさが際立っています。彼女はその自由な発想により、誰もが持つ普遍的なイメージを自分らしく表現してみせたのです。

Image Credits

Felice [Lizzi] Rix-Ueno, ca. 1925. © MAK – Museum für angewandte Kunst, Vienna

Design for WW fabric "Mohn" [Poppy], ca. 1929. Graphite pencil, paper, ink. © MAK – Museum für angewandte Kunst, Vienna

Look /

Runway

オーストリア・ウィーン出身の上野リチ・リックス(1893-1967)は、1912年から1917年にかけてウィーンの美術工芸学校にて、ウィーン工房の創業者で建築家のヨーゼフ・ホフマンに師事していました。リチは在学中よりすでに独自の視覚言語を創造し、生涯それを貫きました。

リチはその後、ウィーン工房で働きながら、壁紙、ガラス、エナメル細工、ファッション、家庭用アクセサリー、そしてグラフィックアートなど、さまざまなデザインを手がけました。

1925年に日本人建築家・上野伊三郎(1892-1972)と結婚して移り住んだ第二の故郷・京都では、上野建築事務所を開設し、インテリア、テキスタイル、壁紙を監督しました。京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)で教育者としても活躍。退職後は伊三郎とともにインターナショナルデザイン研究所を創立し、個人の想像力を重視する「ファンタジー」の概念を確立しました。

2021年には京都国立近代美術館にて世界初となる上野リチの回顧展が開催され、その後、三菱一号館美術館に巡回するなど、時代を越えて注目を集めました。

さらに2023年には、ウィーン工房の女性メンバーとして初の個展がアクリスの後援によって、オーストリア応用美術館(Museum für angewandte Kunst)にて開催されました。

アルベルトは語ります。

リチは、内なる創造性こそが真のアイデンティティへの道であると確信し、工芸の表現の可能性を心から信じていました。工芸を一種のエネルギーと捉えるリチの考えに、私も深く共感します。今回のコレクションを制作するにあたり私たちを導いたのは、まさにこの工芸が持つ力でした。それは、手刺繍のポピー、流れるようなフリンジに変わるタッセル、スーツやコートに施されたオーガンザに織り込まれています。

無限の「ファンタジー」の想像力に敬意を示したいと思います。このコレクションはリチへのオマージュであり、驚きをもたらすすべての女性たちへの賛歌です。リチの世界へようこそ!

アルベルト・クリームラー
パリ、2023年10月1日

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